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看板のない店 【1st season】
OPEN からしばらくの間は店頭に看板を置きませんでした。
例えばコーヒーがいくらかとか、トーストがいくらかとか、
そもそもどんなメニューがあるのか外からは全く分からない。
屋号ですら扉に貼ったカッティングシートの「1 ROOM COFFEE 」だけ。
そこを見て想像力を働かせるか、扉を開けて聞かない限り、
何のお店か良く分からないお店でした。
「なぜ看板を置かなかったのか」
それは誰でも良いからお店に入ってもらおうとか、オープン直後の売上(いわゆるオープン景気の)を期待して無理に集客しようとしなかったからです。
外へ向けたアピールが全くないこの良く分からないお店の扉を、想像力を働かせ、勇気を持って開けた方が喜ぶお店にしていきたい、そう考えたからでした。
(今思えば、強気過ぎて自分がコワイ。((((;゚Д゚))))))))
そしてもう一つの大きな理由。
『確実にオペレーションを遂行できるようになるまで、無理な集客をしない』
と決めていたからです。それは勤めて居た時の苦い経験(この話は今後詳しく書くかも)によるものです。それにしても、先程の強気発言と真逆のディフェンス…。
ざっくりと苦い経験を書いておきます。
新規オープン・リニューアルオープンの店長をいくつか経験し、
当然ながら様々な手段で積極的な集客を試みます。その甲斐あってか、
お店の実力をはるかに上回る客数、そして捌き切れないタイミングで
ご来店が続きます。お店はいつしか機能不全、クレームだらけに陥ります。
修正・改善は試みるものの、スタッフに浸透し、できるようなるまで、
しばらく満足度の低い状態の期間が続いてしまいます。
それなりの集客力のある立地に出店していたので、OPEN当初に来た方々に
残念ながら「もうあの店は行かなくても良いかな」と仮に思われたとしても、
他の新規客は取り込める可能性が十分にある立地でした。
しかしながらココは中板橋。前の投稿でもちょっと触れましたが、
住んでいる人はたくさん居ても、人通りはそれほど多く無いし、
店の前を通る人も、毎日一緒の顔ぶれが大多数のローカルタウン。
そんな街の小さな店に最初にマイナスイメージが付いてしまうリスクを
店主・経営者としては回避したかったのです。
ご来店頂いた方が少人数だったとしても、自分が現在できる全てを出し切って
満足度が高く、「また来たい」、「1 ROOM行こう」と思ってもらいたい。
そういうリピーターさんを地道に増やしていく方が、土台のしっかりした
お店作りができるんじゃないだろうか。
そう考え、**『看板のない店』1 ROOM COFFEE **が開店しました。
お客様が多くはありませんでしたが、オペレーションも無理なく
確認しながら、会話をしたりすることで色々情報を得たり、コミュニケーションを取りながらスタートができました。これはホントに狙い通りだったと思います。
ただし狙い通りでありましたが、成功・正解だったのかとなると話は別です。
看板だけが集客を左右する理由ではないと思いますが、
オペレーションチェックができた後は逆に集客に苦しむ時が多々ありました。
もしかしたらもっと早く看板があるだけでお客様が増えていたかもしれません。
自分がやりたいようにやる為に独立開業したのだから、「好き」にして良いのですが、売上・利益を確保して継続しないことには本末転倒です。
OPENから4か月後ぐらいには、AS.CRAFTさん(当店の家具を作ってくれているオーダー家具屋さん)のご好意・ご協力により、看板を設置しました。
OPEN直後は看板を設置しなくても、1ヶ月程度のオペレーションチェックと
入ってくれる客層の様子を確認したら置いても良かったかなと、今では思います。
「看板を置かない選択をしてお店をOPEN」
↓ (ココの切り替えの判断をもっと早くすれば良かった。)
「状況を把握できたら看板を設置して集客の手段を一つ増やす。」
今後開業する皆さんは(開業以外でも)
AかBかの選択を迷う事柄・局面がたくさん出てくると思います。
他の人にとったら、自分が悩んでいるほどAでもBでも大差ありません。
とりあえずAでもBでもやってみる。
間違った、もしくは状況が変わったと思ったらすぐ変えてみる。
(当時の自分はココの切り替えの判断にスピードがなかったんですね。)
どっちを選んでも成功に近づけるよう変化させていく。
変化させたら、また状況は刻々と変わるので、それに合わせてさらに
変えていく。「その『すぐやる』スピードこそ大事なんじゃないかな。」
と最近は思います。
という「看板のない店【1st season】」のお話でした。
失敗談でも成功談でもないですが、なぜ自分はそうしたのか、
そこにどういう学びがあったのか、ツラツラと綴っていって、
それが読んでくれている皆さんの、考える種にでもなれたら幸いです。
ちなみに看板ぐらいは小さくでも出した方がいいと思います…。
「看板のない店【2nd season】」は、またいつか。